イタリアの医療概況

1994年度におけるイタリア政府の国民医療関係支出は96兆リラ(約7兆円)になる。

イタリア全土の医療機関数は公立病院 1,075 ケ所と市立病院 799 ケ所で、総病床数はそれぞれ27万8千床と9万4千床である。これは住民千人当り4.9 床(公立)と 1.7 床(私立)になる。公立医療機関に恵まれているのは Friuli-Venezia Giulia 州( 住民千人当り7 床)であるが、 Campania 州では住民千人当り3.2 床である。一方私立医療機関では Lazio 州が住民千人当り3.8 床で一番恵まれており、Umbria 州では住民千人当り0.5 床と少ない。全国平均病床使用率(68.2%)は比較的高く、私立医療機関では Abruzzo 州が一番高く85.6%、公立医療機関ではValle d'Aosta 州 が90.3%となっている。

死亡原因を見てみると、循環器疾患(43.6%)、癌疾患(28.1%)が大部分を占めている。寄生虫症を含めた感染症疾患死亡率は 0.4%で、今世紀初頭と比べても余り変わらない。循環器疾患による死亡率では、中、北部イタリア(42.7%)に比べて南イタリア(45.6%)の方が高く、最高率は Basilicata 州の50.2%、最低率は Valle d'Aosta 州の39.8%である。一方癌疾患による死亡率ではこの傾向は逆転する。即ち中、北部イタリア(30.2%)に比べて南イタリア(23.6%)の方が低く、最高率は Lombardia 州の33.1%、最低率は Calabria 州の21.0%となっている。
自殺死亡件数(3,911件/1995年度)ではLombardia 州の703件が一番多い。自殺者の1/4 は女性であるが、自殺未遂件数(3,341件)ではほぼ男女同比率(51.6%/女性)である。

国民の高齢化は年金システムの肥大化になっている。実にイタリア年金生活者(2097万1千人)への年金額は259兆リラ(約18.5兆円)にのぼる。年金受給者の中では身体障害者・高齢者・遺族(1687万7237人)への支給額が224兆リラ(約16兆円)となり、全支給額の89.7%になる。年金の恩恵を享受している人は極めて少なく、しかも支給額も少ないのが現状である。つまり5万4千人の年金受給者に300億リラ(約21.4億円)程度が支払われている。社会保険費用も増加している。1994年度では290兆リラ(20.7兆円)が支出され、大部分(92.7%)が行政分野(272兆リラ)に充てられている。

-ISTAT 1997資料より-

◆医師過剰に伴う失業問題◆ 97/5/30

医師過剰問題はイタリアでは決して新しい課題ではないが、最近送られてきたローマ医師会会報をみると、深刻の度合いが増している。そこで、この抄訳をお知らせしよう。
長年に渡る医師過剰問題は医学部登録学生の制限にもかかわらず、医師会登録医師数を見るかぎりなんら改善されていない。世界保健機構の試算によると、住民600人に対し、医師1人の割合を理想という。イタリアにおける住民/医師の平均は住民173人に対し医師1人であるが、ローマ地区では住民100人に対し医師1人である。(ちなみにイタリアの総人口は5千6百万人、総医師数32万5千人)。従ってイタリア統計局(ISTAT)の資料を見るまでもなく、当然、医師過剰が医師失業となる。そのISTATによると、医学部卒業後5年以内に医師としてのポストを確保出来たのは卒業生の14、9%である。卒後3年後、アルバイト程度のポストを得ているは27、6%である。医師としての仕事が約束されていないだけではなく、経済的にも若い医師は極めて劣悪な条件に甘んじている。この結果、文部大臣宛に「イタリア医師会連合会としては1997/1998年度における国立大学医学部の新規医学生登録停止を申し入れる」となった。

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